第３回
音の知覚の特徴とその応用

	今日のポイント
	聴覚フィルターと臨界帯域
	マスキング
	両耳聴効果・音源定位
	補聴器への応用

マスキング(masking)

他の音の存在によって、ある音の聴覚閾値（最小可聴値）が上昇する現象です。

マスクする音を「マスカー(masker)」、マスクされる音を「マスキー(maskee)」と呼びます。

周波数マスキング

	【マスキングされやすい音とは？】 小野測器のHPの以下のところに詳しい説明があります。音質評価とは？ ５．ラウドネス計算の基となる考え方 周波数マスキング
	純音同士（純音Aと純音B）のマスキングの場合
	�@音圧レベルが…A＝Bの時にマスキングされる
	�Aマスキングする音（マスカー）と同じ周波数帯域の音がマスキングされやすい。 ２音の周波数成分が近い時はマスキング量が大きくなる。（図の重なりの部分がマスキング量）
	�B２音の周波数成分が離れるとマスキング量は小さくなる。
	�Cマスカーより高い音はマスカーより低い音よりマスキングされやすい。（高い方が裾野が広がっている） 蝸牛の基底膜における振動は、１点ではなくある程度範囲がある。蝸牛の入り口に近いほうが高い周波数の音に反応するので、すでに振動してしまっている高い周波数の部分は別の音が来ても揺れが残っていてマスキングされてしまう。 また、音が大きいほど裾野は広がる。
	純音Aを狭帯域雑音Bでマスキングする場合
	(ここがポイント!) 純音Aを雑音Bがマスキングする場合、純音Aの周波数を中心として一定の周波数範囲（帯域）内の成 分だけがマスキングに役立つ。
	【考え方】 １）純音Aに対して、純音Aの周波数を中心にした狭帯域雑音Bによるマスキングを行います。 ２）そして、狭帯域雑音Bの幅を徐々に広げていきます。 ３）そうすると、ある帯域幅においてマスキングが変化しなくなる点があります。 ４）この帯域幅を「臨界帯域幅」といいます。
		【臨界帯域幅の変化】（ここがポイント！） �@300Hz（500Hz）くらいまでは、臨界帯域幅は常に100Hz。 �Aそれより上の周波数では1/3から1/4オクターブの割合で増加している。

	【いろいろなマスキング】
	同時マスキング(simultaneous masking)
	マスキングする音とされる音が同時提示。 つまり、複数の音があって、ある音によってある音が聞こえなくなること。
	経（継）時マスキング(temporal masking)
	２つの音が短時間に連続する場合
	順向性マスキング(forward masking)
	先行音が後続音のマスキングをする場合
	逆向性マスキング(backward masking)
	後続音が先行音のマスキングをする場合
	両耳間マスキング(contralateral masking)
	骨導により約50〜60dB減衰して対側耳のマスキングをする場合
		聴覚検査で、どんな時にマスキングが必要か調べよう！ きこえとことばの発達相談室のＨＰ マスキング
	同耳マスキング(ipsilateral masking)
	中枢性マスキング(central masking)

両耳聴効果・音源定位

	回折現象
	低い音の方が強いので遮断されることが少ない 高い音では弱く、対側耳では20dBほど減衰
	両耳加算
	片方の耳で聴くより両耳で聴いたほうが小さい音が聞こえる。
	方向定位能力
	高い周波数の音…左右の耳に到達する音の強さの差
	低い周波数の音…左右の耳に到達する音の時間の差

	カクテルパーティー効果
	多数の音の中から選択的に音を聞き分けることができること。録音すると聴こえないが、 人間の耳は「選択的注意」によりある音を集中的に聞くことができる。 →両耳聴によりよくなる
	ドップラー効果
	近づく音源…高くなる
	遠ざかる音源…低くなる
	ドップラー効果のデモのHPです たまきちの物理　ドップラー効果「どっぷりjava版」 ドップラー効果のビデオがあります。 物理動画祭のHP
	マクガーク効果
	視覚情報が音声の聞き取りに影響与えること。
	ビデオ画像の口の動きと流れる音声が違う場合、２つが融合して聴こえる。
	ハース効果
	AとBの２方向の音源から音が出ていても、Aの音源を時間的に遅らせるとBの方向から 音が出ているように感じる。 また、ＡとＢと同じ音を出している時、Ａの出力を上げるとＡから音が出ているように聴こ える。 人間の聴覚特性を利用して音に方向感を持たせることを「ハース効果」と言う。
	音韻修復効果

補聴器への応用

実験１　

実験２　

実験３