言語聴覚士のための聴覚心理学


第１回

音のしくみ

	今日のポイント
	音の伝わり方
	純音って？
	純音を聴いてみよう！見てみよう！
	複合音
	複合音を聴いてみよう！見てみよう！
	復習テスト

聴覚心理学のはじまり、はじまり〜！

音響学ではどちらかというと「音の物理的性質」を勉強したよね。

聴いている人がいるいないにかかわらず音がどんな性質をもっているかについてだ。

聴覚心理学ではそれらの知識をもとにして「人がどのように音を聴いているか」について学ぶよ。

日常生活でなにげなく音を聞いてるけど、とっても不思議な聞き方をしてる。

その不思議な世界をちょっとだけ探検してみよう！

まずは、音響学でならったことの復習から。。。

ちゃんと覚えているかな？


１．音の伝わり方

	音は「振動している物質」から出る。
	音が伝わるためには「媒質」（ここでは空気）が必要。
	→真空だと音は伝わらない
	↓
	近くの空気が押され、「密な部分」ができる。
	↓
	「密な部分」が近くの空気を押し、「密な部分」が移動していく。
	↓
	「密な部分」と「疎な部分」が交互に伝わっていく。
	→「疎密波」と呼ぶ
	↓
	耳に届いて、鼓膜を振動させ、音が聴こえる。

縦波・横波

【ここがポイント！】
横波	�@波の進行方向と媒質の振動方向が垂直 �A個体のみに伝わる
	………………………………………………………
縦波	�@波の進行方向＝媒質の振動方向 →音波は縦波 �A別名「疎密波」ともいう →媒質の「密」な部分と「疎」な部分ができ、伝わる �B個体、液体、気体いずれでも伝わる �C教科書の図では、縦波を「横波表示」している

たまきちの物理 HomePage（北村俊樹さん作成）で横波と縦波を見てみよう。
横波と縦波の位相

２．純音って？

	ここはとっても大切！
	音の「強さ」と「大きさ」は違うことに注意！ 用語として使い分けよう。 「強さ」＝音の物理的強さ、つまり音圧のこと。 「大きさ」＝人が音を聞いた時の大きさ。（あとで出てくるよ）
	下のグラフの縦軸は音の強さ（音圧）を表します。 赤い部分（一番強いところ）の値を「振幅」と呼びます。
↑ 音圧
	→距離 横軸の緑の部分は「波の１つの繰り返し」を表しています。 この長さ（距離）を「波長」といいます。（単位：m） 同じグラフで横軸を「時間」に変えてみます。
↑ 音圧
	→時間軸 この時間を「周期」（単位：秒）といいます。
	１秒あたりに振動する回数を「周波数」（単位：Hz）といいます。 ＝「振動数」

周波数と音の高低の関係

波形の振幅と音の強さの関係

正弦波は以下の３つの要素が決まれば１つに決まる！

波長と周波数の関係

	【ちょっと練習問題】
	�@以下の音を途中から、強さを変えずに高くしたらどのようになるか続きをノートに書いてみましょう！
	�A高さを変えずに、強さを弱くしたらどのようになるでしょう？
	�A高さを低く、同時に強さを強くしたらどのようになるでしょう？
	全部できたかな？

		【ちょっと練習問題】
	�@	周波数をもとめる問題
		１秒に200回くりかえしている音波は何Hz？
		１秒に3000回くりかえしている音波は何Hz？
	�A	周期をもとめる問題
		１秒に200回くりかえしている音波の周期は何秒？
		１秒に3000回くりかえしている音波の周期は何秒？
	�B	波長をもとめる問題
		１秒に200回くりかえしている音波の波長は何cm？
		１秒に3000回くりかえしている音波の波長は何cm？
	�C	周波数から周期をもとめる問題
		400Hzの音波の周期は？
	�D	周波数から波長をもとめる問題
		400Hzの音波の波長は？

		紙テープで以下の周波数の波長の長さを切ってみよう！
		�@100Hz
		�A1000Hz
		�B4000Hz

３．純音を聴いてみよう！見てみよう！

ESynthというソフトで簡単に、様々な周波数の純音を作れます。
ESynthは以下のページからダウンロードできます。使ってみよう！
Windows Tool for Harmonic Analysis & Synthesis
http://www.phon.ucl.ac.uk/resource/sfs/esynth.htm

以下が作成した純音です。
それぞれの音をクリックして聞いてみましょう。
音の高さの違い、強さの違いが分かりますか？
聴覚検査では、1000Hｚと4000Hzの純音が一番よく使われます。（聴き比べてみましょう）

純音とは？

【ここがポイント！】
	�@正弦波で表現される
		こんなイメージ
	�A単一の高さを感じる
		ずっと同じ周期が続いて変化しないので 高さもずっと同じ。
	�B理想的には永遠に続く →短音ではだめ	現実には無理です。。。つまり理想的な音 ということです。
	�C「線スペクトル」になる

	Spectrum Section（スペクトル表示）を出してみよう！
	WavesurferでSpectrum Sectionを出してみましょう。
	音声を読み込んで波形(Waveform)を出します。
	↓
	波形の上で、ある一時点を選んで右クリック。
	↓
	ポップアップメニューから Spectrum Sectionを選択
	↓
	スペクトルが表示されます。
	WavesurferでSpectrum Section を実際に出してみるとこうなる

【ここがポイント！】
		「スペクトル」ってなあに？
		波形表示では。。。
		縦軸が音圧（物理的音の強さ）、横軸が時間を表していました。 周波数は波の１秒間の「繰り返しの数」を数える必要があります。
	音圧
		→時間
		スペクトル表示では。。。
		横軸は「周波数」、縦軸は「音圧」を示したグラフです。 例えば、100Hzの純音のスペクトルは右のようになります。 このようなスペクトルを「線スペクトル」といいます。 純音または純音の複合音のスペクトルが「線スペクトル」です。 その他は「連続スペクトル」になります。

４．複合音（フーリエ級数を使った音の分析と合成）

プリント「フーリエの冒険」より抜粋
→プリントに色紙を貼って「波の足し算」を実際にしてみよう！

	フーリエ級数は フランスのフーリエさんという人が発見しました。
	すべての周期的な音は、その音の整数倍の周波数の純音（正弦波）に分解できる！
	Wavesurferとかの音声分析ソフトではこれを自動でやってくれてます。
	↓
	そして、その逆も可能です。
	つまり分解できるんだから、それを足し算したらもとの音に戻るということです。
	ここでは、まずは純音の足し算からしてみます。
	ついでに「波形表示」と「スペクトル表示」についても勉強しよう！

【ここがポイント！】
	波形表示		スペクトル表示
↑ 音 圧		→		波形では「１秒間の繰り返しの回数」と なっているものが、スペクトルでは横軸 の周波数となる。 波形では、振幅で表されていた音圧が スペクトルでは縦軸（棒の長さ）となる。
	100Hzの波 （1秒間に100回繰り返しがある波） 時間→			つまり、波形の繰り返しの回数と振幅だ けをグラフにしたものです。
		→		200Hｚの波はこうなる
	200Hzの波
		→		300Hｚの波はこうなる
	300Hzの波
		→		３つを足し算するとこんな具合！ 位相がちょっとずれてますが。。。
	100Hz+200Hz+300Hz

５．複合音を聴いてみよう！見てみよう！

純音を足し算したものが複合音です。
ESynthというソフトで、いろいろな倍音を足し合わせて複合音を作ってみよう。

複合音１は、純音４と純音５を足し算して作った複合音です。
複合音２は、純音４、純音５、純音６を足し算して作った複合音です。
それぞれの純音単独と聴き比べてみよう。
複合音１と複合音２とでは聴こえ方に違いがあるだろうか？

それぞれのサムネイルをクリックするとESynthによる入力が大きく見えます。

	純音４	純音５	純音６
	複合音１	複合音２

６．復習テスト

	それでは、まとめのテストです！
	名前 メールアドレス 学籍番号 １．音は縦波？横波？ 縦波 横波 ２．波の１つの繰り返しの長さ（距離）は？ 波長 周期 ３．振動数が多くなると音は？ 低くなる 高くなる ４．振幅が大きくなると音は？ 強くなる 弱くなる ５．周期が0.002秒の周波数は？ 5000Hz 500Hz ６．今日の授業の進度はどうでしたか？ もっと速くてもいい ちょうどいい速すぎた ７．今日の授業のコンピュータ操作はどうでしたか？ 簡単だった 大体大丈夫大変だった ８．授業への希望・今後、扱って欲しい内容など